「デフレの正体−経済は人口の波で動く」(藻谷浩介著 角川書店刊)を読みました。衝撃の書です。池田信夫氏の意見と多少違うので警戒しながら読みすすめました。「経済成長は人口と投資とイノベーションの複合結果であり、日本はイノベーションで現状打開するしかない」と思っていました。人口の減少は大問題だということは理解していましたが、これほどの凄いインパクトを持っていることに衝撃をうけました。事業や政治、自分の人生の前提条件を考え直す必要があります。一般人のみならず、マスコミや識者ですら先入観に囚われすぎていると痛感しました。
「事実」「意見」について大変勉強になりました。解決策は「高齢富裕層から若者への所得移転」「女性の就労と経営参画」「観光客・短期定住者の受け入れ」であることを納得しました。著者に心から御礼を申し述べます、藻谷先生、ありがとうございました。是非、ご講演をお聞きしたいと思います。 驚いた部分を一部、備忘します。
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 新書
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…日本が中国から稼ぐ黒字は2兆円をこえるところまでグングンと伸びてきたわけです…現実には中国が繁栄すればするほど、日本製品が売れて日本が儲かるのです。中国経済がクラッシュすれば、お得意さんを失う日本経済にはそれこそ100年に一度の大打撃です。(p.41)
…フランスとイタリアは、禁煙一貫して対日貿易黒字なのです…強力な資源を持っているのです。なんでしょうか。「自国製」の「高級ブランド品」です。(p.47)
…国際競争に勝っても勝っても、それとは無関係に進む「内需の縮小」こそ、日本経済が直面する恐るべき病気なのです。(p.52)
…この12年間には、日本の実質GNPは10数%も伸びましたが、国内の小売業の売上はずっと減っていたのです(p.55)
日本経済をむしばむ「内需の縮小」という病気、よく犯人扱いされるのが「地域間格差」ですがそれは冤罪だ…(p.62)
首都圏では90年度末〜06年度末の16年間に、小売店の売り場が4割も増えてしまいました。この間に売上は4%減ですので、売場効率は3割も低下、06年度は90年度の7割の水準です。…青森…以上にひどい数字…都心は首都圏平均よりさらに厳しい状況(p.74)
…沖縄は、就業者数が、日本の都道府県で唯一順調に増加を続けてきた県なのです。…沖縄では、失業率が高くて有効求人倍率がとても低いにもかかわらず、就業者数が増えている…(率ではなく絶対数が重要)
苦しむ地方圏を襲う「2千年に一度」の現役世代の減少(p.91)
…少子化=子供の減少と高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、「子供さえ増やせば高齢化は防げる」というまったく誤解の元凶になってしまっています。さらにはもっとも重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまっています(p.97)
…人件費を削り納入企業を買い叩き、とお互いにコストダウンに邁進しているうちに、お互いの売上が減り、日本の企業社会全体の付加価値額が停滞します(p.148)
…日本では…相続する側の平均年齢が67歳だというのです(p.166)
「日本の生き残りはモノづくりの技術革新にかかってる」という美しき誤解(p.187)
「出生率上昇」では生産年齢人口減少は止まらない(p.190)
「外国人労働者受け入れ」は事態を解決しない(p.194)