未来の子どもたちへつなぐ、農業とエネルギーの新しい形
知人である東 光弘さんの新刊、
『ソーラーシェアリングで始める持続的な農業』を読みました。
東さんとは、ソーラーシェアリングの創始者である長島彬先生を介して知り合いました。
出版のお知らせを聞いてすぐAmazonで注文し、本日届いた本を一気に読了しました。
結論から言えば、ソーラーシェアリングに関心のある農家の方、自治体・学校関係者、再生可能エネルギーや地域づくりに関わる方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
本書はコンパクトでありながら、ソーラーシェアリングの考え方、導入の意義、設備・営農・採算・理念という重要な論点、制度上の注意点、そして各地の実践例まで、全体像をきちんとつかめる良書でした。
農業を続けながら、エネルギーもつくる
ソーラーシェアリングとは、農地で農業を続けながら、その上部空間などを活用して太陽光発電も行う仕組みです。
これは単なる売電事業ではありません。
農業を持続させ、地域にエネルギーを残し、次世代へより良い環境を渡していくための仕組みです。
著者の東 光弘さんは、2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故を契機に、環境負荷の少ないエネルギーのあり方を模索する中で、ソーラーシェアリングの創始者・長島彬先生と出会われました。
そこから仲間とともに市民エネルギー千葉を立ち上げ、農業と地域づくり、再生可能エネルギーの実践を積み重ねてこられました。
長島先生の農園で学んだこと
私自身も、長島先生とのご縁を通じて、長島先生の農園に4年ほど通い、農作業のお手伝いをさせていただきました。
また、「ソーラーシェアリング発祥の地の石碑」建立のお手伝いにも関わることができました。
現場に立つと、太陽光パネルの下でも野菜が元気に育ち、農業と発電が十分に両立できることを実感します。
数字や制度だけでは見えない、土の感触、作物の育ち方、農家の皆さんの思いがあります。ソーラーシェアリングは、まさに現場で確かめ、育てていく仕組みだと感じています。
教育用「ソーラーシェアリング3S」への取り組み
株式会社ロビームでは、教育用キット「ソーラーシェアリング3S」の製造・販売に尽力してきました。
神奈川県立吉田島高校、千葉県立市原高校へ納入し、生徒の皆さんに、農業と再生可能エネルギーの関係を学んでいただく機会づくりにも取り組みました。
現在、弊社としての3S事業は停止していますが、高校からご要請をいただいた際のメンテナンス対応は続けています。
教育現場で伝えたかったのは、太陽光発電の仕組みだけではありません。
農業、環境、地域、エネルギー、仕事、そして未来は、すべてつながっているということです。
成功の鍵は「採算・設備・営農・理念」
本書には、ソーラーシェアリングを考えるうえで欠かせない四つの要素として、次の点が示されています。
・採算 ・設備 ・営農 ・理念(物語性)
特に、理念や物語性を重要な要素として位置づけている点に、私は強く共感しました。
どんな地域をつくりたいのか。
農業をどのように続けていきたいのか。
子どもたちにどのような環境を残したいのか。
技術や収益だけでなく、こうした問いがなければ、持続する取り組みにはなりません。
ソーラーシェアリングは、設備を設置して終わりではなく、農業を続け、地域に根を張り、未来へつなげていく事業なのだと思います。
東 光弘さんの人間力と発信力
本書の終章には、東さんが感謝を捧げる三人のお名前が出てきます。
ソーラーシェアリングの創始者・長島彬先生。
城南信用金庫元理事長の吉原毅さん。
市民エネルギー千葉で共に歩まれた椿茂雄さん。
私も三名の皆さまと面識がありますが、いずれも素晴らしい見識と行動力を持つ方々です。
その方々を動かし、長年にわたって実践を積み重ねてこられた東さんの人間力は、本当に素晴らしいと思います。
東さんはNHKをはじめとする多くのメディアにも登場され、ソーラーシェアリングの意義を社会へ伝え続けてこられました。
その発信力と実践力、そして多くの人をつなぐ力が、この本には凝縮されています。
未来の子どもたちのために
農業を守りながら、エネルギーもつくる。
地域の中で電気を使い、仕事を生み、未来へつなぐ。
ソーラーシェアリングには、まだまだ大きな可能性があります。
農業、地域づくり、再生可能エネルギー、教育に関心のある方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
未来の子どもたちのために。
農業とエネルギーのこれからを考えるために。
ぜひ多くの方に手に取っていただければと思います。
【書籍】
『ソーラーシェアリングで始める持続的な農業』
著者:東 光弘
Amazon購入はこちら
https://x.gd/EJqsr
備忘します。
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福島第一原子力発電所事故と、長島先生との出会い
2011年3月11日に福島で原子力発電所の事故が起きました。僕らのやり方では間に合わなかったなという、くらいの挫折の気持ちの中、環境にできるだけ負荷をかけない、再生可能エネルギーはないものかと模索してるときに、知人を通じて、ソーラーシェアリングの、創始者である長島彬先生に運命的に出会いました。
長島先生には、2年ほど、まさにゼロから様々なことを教わりました。…その準備期間を経て、市民レベルでもとにかく何かを始めなければ、という、やむにやまれぬ思いで、仲間たちと一緒に持続的な農業と、地域づくりに、取り組む市民発電所として、千葉県匝盛市に、資本金たったの90万円で、千葉エネルギー、市民、エネルギー千葉、民エネ、という会社を、合同会社で設立しました。ページ1
本書に込められた思い
この本では、ソーラーシェアリングを足がかりに、環境負荷の少ない、再生可能エネルギーを普及させ、新しい農業の形を創造し、希望に満ちた、楽しい未来の社会を、思い描いていくための道筋を示していければと思います。ページ2
特許を公開した長島先生の志
根底にあるソーラー、根底にあるシェアの精神。
ソーラーシェアリングは、名付け、親であり、創始者の長島彬先生によって、考案された、日本初の技術です。もし長島先生が、1設備あたり数万円程度の、特許料を取っていれば、数千件にまで、増えた設備からすでに数億円の、利益を得ることができ、できた、できたと思います。…ですが、長島先生は、すべては、未来の子どもたちのために、をスローガンに、脱炭素、脱原子力社会への、一刻も早い、移行を優先し、特許を公開して、誰でも、無料でこの技術に参画できる形を、選択しました。ページ3
農業以外にも広がる可能性
社会の課題解決に様々な応用が可能。
現時点で、一番普及が進み、注目されているソーラーシェアリングの、活用方法は、営農型ですが、ソーラーシェアリングは必ずしも、農業だけに留まりません。長島先生の最初の特許出願の時点から、商業施設の、駐車場やビル屋上に設置するなどの、活用方法も想定されています。ページ13
遮光性を生かす
遮光性を活かす
老朽化した、遮光設備をちょうど建て替えるタイミングだったとか。太陽光パネルが光を遮るので、遮光ネットの、設置費用は不要です。設置後、現在までの6年間、植木の育苗は、順調との報告をいただいています。ページ14
ソーラーシェアリングを支える四つの要素
基礎になる4つの要素
ソーラーシェアリングは様々な、側面があり、最初は全体像が分かりづらいかもしれません。ですから私は、ざっとでも全容を理解していただくために、当地に視察に来られる皆さんに、ソーラーシェアリングは4つの要素でできていますとお伝えしています。
1番目の要素は、採算です。…
2番目が、設備です。どのくらいの規模で発電をやろうと考えているか、風で飛ばないか、作物に影響はないのかなど、設備に関するあらゆるものが含まれます。
3番目が、営農です。農地の、場合、健全な営農が法律上も求められていますので、作業性も含めた、農業の、持続性、継続性が、欠かせません。
4番目が、理念(物語性)です。これに関しては、将来この地域をどうしたいのか、自分の、農業経営をどうしたいのか、地球温暖化に対して次世代にどのような環境を残していきたいなど、正解というものはなく、100人100様で良いと考えています。ページ24
出力抑制への注意
出力抑制を考慮する
電力会社の系統に接続する場合は、九州電力管内をはじめとして出力抑制がかかるため、プランを立てる際に注意が必要です。出力抑制とは、これ以上系統に電気を流すと停電の恐れがあると判断されたときに実施されます。九州電力管内では実質10%以上実施されています。ページ30
農地法を満たす要件
農地法を満たす要件
ソーラーシェアリングのための農地の、一時転用の許可を得るためには、ハード面でも農地法に基づいた内容を満たさなければなりません。ページ33
知見書の重要性
知見者について
添付書類の中で、内容的に最も難易度が高いのが、いわゆる、有識者からの知見書です。これは、意見書、助言書、技術評価書などとも呼ばれ、自治体によって名称が異なります。これは、営農、継続性、収穫、確保、などに関して、記載するものですが、特にその地域で新しい作物での、ソーラーシェアリングに挑戦するときに、苦労することが多いです。ページ36
遮光率の考え方
細型パネルなら作物に影響なし
…最も配慮しなくてはならないことは、太陽光パネルと隙間の比率をどれくらいにするかという問題です。一般に遮光率と呼ばれているのですが、太陽光パネルの角度は考慮せず、地面に平行に設置した場合の、設備全体の面積に対する比率として計算されるのが一般的です。ソーラーシェアリングの発案者の長島彬先生は33から35%を推奨されています。ページ40
電気を地産地消するオンサイト型
電気は地産地消する。オンサイト
発電所でつくった電気をその敷地内、または隣接した敷地で活用するオンサイトの設備です。この場合は、送配電事業者の電線を使用することなく、自営線でその敷地内や、隣接している建物にそこで消費される電気を供給する方法です。太陽光発電のいいところは、それぞれが独立して機能することが可能なことなので、最も地産地消なオンサイト設備は、理想的とも言えます。ページ43
小さく始められる仕組み
農業設備で小さく作って小さく使う
ソーラーシェアリングの良いところは、4メートルかける4メートル程度の、庭先にでも作れる、本当に小さいものから、数ヘクタールから数十ヘクタールの大きな設備まで、基本的に同じ仕組みで作られることです。ページ48
雪国での可能性
雪国で大きなプラス効果
また雪国においてはとりわけ大きなプラス効果が確認されています。これまで雪国では日照時間が短めだったり、雪がパネルを覆うと、発電量が減少したりと、雪の少ない地域に比べて、太陽光発電にはマイナスな側面がありました。しかし、両面受光パネルの価格下落により、豪雪地帯でもソーラーシェアリングならば十分採算が合うようになりました。ページ51
ペロブスカイト太陽電池への期待
超本命、ペロブスカイト太陽電池への期待
今後、特に期待しているのが、ペロブスカイト太陽電池です。これは2009年に、桐蔭横浜大学の宮坂教授が世界に提案した太陽電池です。たった16年の間に発電効率が高まり、実験室レベルでは26%超えました。商品レベルでも15%となり、これまでの主流であるシリコン系太陽電池の実質的発電効率に迫りつつあります。また、ペロブスカイト太陽電池は曲げられるくらい薄く、とても軽いので、これまでにできなかった架台設計も可能になります。ページ56
…私自身はペロブスカイト太陽電池はまさにソーラーシェアリングのために生まれてきた技術だと感じており、大いに期待しています。2026年度からは自治体などの金属屋根用に限られていますが、いよいよ、一般販売も始まりました。まさに新しいページの始まりです。あくまで試験ですが、2030年には現在のシリコンタイプの太陽光パネルと同等かそれよりも安い値段になると予想しています。そして、2040年には営農型に限らず相当に一般化されることでしょう。ページ57
金融機関が見抜いた本質
そんな中、飛躍の大きなきっかけとなったのは、2016年に当時の城南信用金庫理事長、の吉原毅毅さんが、当地に視察に来られたことです。吉原さんは福島第一原発事故を、契機に、脱原発活動を精力的に実践されていました。その後、同、金庫役員の皆さんも、交えた、複数回の視察を経て、地域振興と低環境負荷、有機、農業振興などの、意義を総合的にご理解いただきましたが、とりわけ吉原さんはソーラーシェアリングの最大のポイントは農業の継続性にあるという核心をすぐに理解してくれました。発電による収入が、農業の継続につながる一方、パネルの下で農業を続けなければならないという条件が、農業の継続性と発電事業の継続性の両方を相互に担保する、表裏一体の関係であることに瞬時に気づかれたのです。…吉原さん始め、城南信用金庫の皆様に私たちに関しては、当地での農業の継続性が担保されているということを判断いただいた結果として、2億円以上の、融資の内諾をいただきました。びっくりすると同時に、この人こそ本物の金融家だ、と心の底から思いました。ページ59
都市型農業と農福連携の実例
都市の、生産緑地で、農福連携型の、施設園芸。神奈川県「金子農園」
横浜の洗練された街並みからほど近い青葉区の、生産緑地に、未来の農業の可能性を凝縮したようなユニークな農園が広がっています。ユニバーサル、アグリカルチャー、サポートLLCが、運営する都市型ソーシャルファーム、「金子農園」です。ビニールハウスの上ではソーラーパネルが静かに発電し、ハウスの中ではAIによる、環境制御のもと、高、畝の、アスパラや、ブルーベリーが育てられています。
…2021年に稼働を開始した、ソーラーシェアリング設備は、ビニールハウスの屋根の上と、隣接する路地の畑にハイブリッドに設置された、まさに都市型農業ならではのスタイルです。限られた土地を立体的に活用し、農業生産とエネルギー創出を両立させています。発電した電力はAIやビニールハウスなどで自家消費され、持続可能な農園経営に、貢献しています。余剰分は売電し、障害を持つ、従業員が安定して、働き続けられる、経営環境づくりにもつながっています。ページ67
長島先生の圃場で確信したこと
ソーラーシェアリングに出会って、約14年が経ちました。その第一印象は実はネガティブなものでした。それでも、「いいも悪いも一度は見ないと」と思っていたところ、縁あって、発案者の、長島先生の実験、圃場を訪ねたのが2012年の夏でした。全国の素晴らしい、有機圃場を見てきた私は、長島さんの設備を実際に見るまでは、少し陰気でいじけたイメージの野菜たちを想像していました。ところが実際に初めて見た長島先生の畑の野菜たちは、「俺たちは元気だよ」とでも言いたげな、たおやかな雰囲気を持っていたのです。
本能的に、これはきちんと検証してみる必要があると思い、それから週1回の割合で、千葉県市原市にある、実験圃場に通い、農作業に参加させてもらうようになりました。
1年ほど通い、自分でも数十種類の野菜を、作付けしてみて、長島さんの提唱する、細いパネルで遮光率が35%以下であれば、どんな野菜も元気に育つことに確信が持てました。ページ100
三人への感謝
最後に、14年前に出会って以来、この技術の可能性を教えてくださったソーラーシェアリングの創始者である長島彬先生、資金も実績もない私たちを信じ、最初の第一歩を力強く支えてくださった城南信用金庫の元理事長、吉原毅さん、そして、何もないところから、苦楽を共にし、市民エネルギー千葉の共同パートナーとして、一緒にあせを流してくれた椿茂雄さん、このお三方に対して、この場を借りて心からの感謝を申し上げます。ページ109
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