「ヘンな論文」を読みました。10年前の本ですが、取り上げている論文は面白いです! 「公園の斜面に座るカップルの観察」「浮気男の頭の中」「「コーヒーカップの音の科学」「現役、床山アンケート」「おっぱいの揺れとブラのずれ」「湯たんぽ異聞」などなど、興味深い論文、笑える論文の紹介です。特に論文執筆者の話がよいです。問題の発見、執拗な追求、粘着性紛紛、暇人の研究としか思えない中に真摯な姿勢が垣間見えて好感がもてました。
「斜面に座るカップル」のデータ収集をしていた学生がカップルになったり、「おっぱいの揺れ」をマーク画像で数値化したり、その発想と実行力に脱帽しました。圧巻は、「湯たんぽ異聞」です。湯たんぽは、「室町時代に中国から伝来、戦国時代に形を変えて西洋から伝来、一時はすたれたものの、明治になって復活した」との仮説を論文にしています。何と論文執筆者の伊藤紀之さんは、工業デザイナーにして、湯たんぽコレクター、浮世絵コレクター、ファッション・プレートコレクター、共立女子大学の名誉教授とのこと、驚きました。
ちなみに著者は、お笑い芸人「サンキュータツオ」さんです。「日本の笑えない芸人、日本語学者。漫才コンビ”米粒写経”のツッコミ。ワタナベエンターテインメント所属。一橋大学・早稲田大学・成城大学非常勤講師。」だそうです。備忘します。
- 作者:サンキュータツオ
- 発売日: 2017/11/25
- メディア: 文庫
…この「奇人論序説」は、京都の河原町…にいたという伝説的なホームレス、通称「河原町のジュリー」に関する噂を、文献、ネット、ほとんどすべてをしらみつぶしに調べ尽くした論文…ページ10
この「他人の存在が気になり始める距離、空間」のことを、心理学の用語で「パーソナルスペース」という。そして、」小林先生がこの論文を書いた動機は「パーソナルスペース」の主体が一人ではなく、二人になったときはどうなるのだろう、というところにある。ページ34
ご存じだろうか? 日本人既婚男性における浮気経験者は50.8%と、半数以上におよぶということを!ページ44
あくびは、想像してもうつるし、見てもうつるし、読んでもうつる、ということがわかってきた。どうやら、人間の脳の活動とあくびとは密接な関係にあるらしい。ページ67
コーヒーカップにインスタントコーヒーの粉末を入れ、お湯を入れてスプーンでかき混ぜると、スプーンとコップのぶつかる音が、徐々に高くなっていく。ページ80
かくして、コーヒーカップとスプーンの接触音の音程変化は「気泡」が犯人であることが確定されたのである。ページ89
多くの場合、女子校は共学化すると偏差値が低くなり、男子校は共学化すると偏差値が高くなる…ページ109
「大量生産の過程を経るとデザインは、必ずファッション化の道をたどる」とは、先生の書き物のなかに出てくる一説である。これは、湯たんぽ、ひいては家政学ならずとも、すべてのジャンルにいえることではあるまいか。ページ219
研究とはエンターテイメント、これが私の主張である。なにより研究している本人が一番ノリノリで興奮しているのだ。さらに同志もいると、偉大な謎の前に、ああだこうだ考えながら、議論を交わす「プロセス」と、「結果」の面白さが、そこにはあるのだ。ページ224