岡田斗司夫さんのYouTubeをきっかけに、NHKのドキュメンタリー『縦の支配 中国 ショートドラマの光と影』を視聴しました。
見終わったあと、衝撃を受けると同時に、いろいろなことを考えました。
番組で描かれていたのは、中国で急成長している縦型ショートドラマの世界です。
短期間、低予算で大量の作品を作り続ける制作現場。厳しい寒さの中でも撮影が行われ、出演者やスタッフは効率と数字を最優先する仕組みに組み込まれていました。
特に印象に残ったのは、中国の人々の生活です。
単にお金がないという「貧しさ」ではなく、努力しても将来が良くなる見通しが持てない「貧困」。
希望が見えない日常の中で、短いドラマを次々に見て、その場限りの爽快感や刺激を得る。その姿が、とても重く感じられました。
縦動画は、スマートフォンの画面を少し動かすだけで、次々と新しい映像が流れてきます。
内容をじっくり考える前に、驚き、怒り、笑い、感動といった刺激が与えられます。長い動画を集中して見るより、反射的に反応し、その瞬間だけを楽しむ。
見終わったあとには、内容がほとんど記憶に残っていないこともあります。
しかし、私は縦動画を否定できる立場ではありません。
むしろ、この半年ほど、自分自身もYouTubeショートやTikTok、Instagramリールなどの縦動画を数多く制作してきました。
動画の構成、台本、最初の数秒のつかみ、テロップ、言葉選びまで、縦動画に合わせて考えることが増えています。
実際、横長の動画よりも、短い縦動画の方が多くの人に見てもらえることを、数字として体感しています。
最初の1秒で興味を持ってもらえなければ、すぐに次の動画へ移られてしまう。
そのため、結論を先に出し、余計な説明を削り、短く強い言葉を使う。見る人が立ち止まるように、構成や台本、ワーディングを細かく調整する。
私自身も、まさにこの仕組みを利用しています。
だからこそ、今回の番組は他人事ではありませんでした。
多く見てもらうために縦動画を作ることと、見る人の注意を奪い続けること。その境界は、どこにあるのでしょうか。
縦動画そのものが悪いとは思いません。
短い時間で商品や活動を知ってもらえる、とても優れた情報発信の手段です。中小企業や個人にとっては、多額の広告費を使わずに、多くの人へ届けられる可能性もあります。
私のような小さな会社にとっても、縦動画は欠かせない発信手段になっています。
ただし、再生回数だけを追い始めると、内容よりも刺激が優先されます。
驚かせる。怒らせる。不安にさせる。続きが気になるように引っ張る。
その結果、動画を見てもらうこと自体が目的になり、本当に伝えたかったことが薄れてしまう危険があります。
発信する側として大切なのは、「何回見られたか」だけではなく、「何が伝わったか」「何が残ったか」を考えることだと思います。
短い動画でも、商品への思い、ものづくりの背景、地域との関わり、人への感謝は伝えられます。
縦動画の仕組みを活用しながらも、アルゴリズムに振り回されないこと。
見る人の時間を奪うだけではなく、何か一つでも役立つことや、心に残ることを届けること。
これから動画を作るうえで、改めて意識したいと思いました。
時代は確実に変わっています。
縦動画は一時的な流行ではなく、今後さらに情報発信の主流になっていくでしょう。
だからこそ、見る側も作る側も、その仕組みを理解する必要があります。
岡田斗司夫さん、重要な問題を紹介していただき、ありがとうございました。
そして、中国のショートドラマ産業の光と影を取材し、映像にしたNHKにも感謝します。
NHKオンデマンドなどで視聴できます。
SNSや動画に関わる方、そして日頃スマートフォンで短い動画を見ている方にも、ぜひ一度見ていただきたい番組です。
