明治4年、政府の中枢メンバーを含む48名が、約3年にわたり欧米を視察しました。
いわゆる岩倉使節団です。
今回読んだのは、その記録である「米欧回覧実記4」。
第四巻では、ロシア、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、イタリア、オーストリアなどが描かれています。
■ 驚きから「分析」へ変わった視点
アメリカ・英仏を見た後のヨーロッパ視察ということもあり、
単なる驚きではなく「冷静な分析」に変わっているのが印象的です。
たとえばロシア。
農奴制度は廃止されたものの、
強い王権
重い税負担
遅れた産業
という構造的な問題を見抜いています。
またオーストリアについては、
「貴族が富を独占しているため、技術が発展しない」
とまで言い切っています。
■ 教育こそ国家の柱
一方で強く評価しているのがスウェーデンの教育です。
国語
文法
図画
算数
この基礎教育を徹底している点に感銘を受けています。
「難しいことを教えるのではなく、誰でも理解できる形で教育する」
この考え方は、今の教育にもそのまま通じます。
そしてこれは企業にも同じです。
現場で理解できない仕組みは、絶対に回りません。
■ 国際関係は「幻想で判断するな」
特に印象的だったのはこの指摘です。
各国はそれぞれ思惑を持って動いている
本当にどの国と親しむべきかは、現実を見て判断せよ
これは現代にもそのまま当てはまります。
・友好関係
・同盟
・文化的な親しみ
これらは表面的なものであり、
本質は「国益」です。
■ 日本への厳しい指摘
著者は日本に対しても厳しい視点を持っています。
山を放置している
鉱業を起こそうとしない
森林から利益を生もうとしない
つまり
「資源を活かす発想が弱い」という指摘です。
これは現代の中小企業にもそのまま当てはまります。
・技術があるのに活かせていない
・強みがあるのに商品化できていない
・資産があるのに収益化できていない
非常に耳が痛い話です。
■ 西洋の本質は「欲望」と「仕組み」
もう一つ興味深いのは、東洋と西洋の比較です。
東洋:道徳・統治
西洋:欲望・利益
そして西洋はその欲望を、
技術
制度
産業
によって社会の力に変えている。
この違いを冷静に見ています。
■ 150年前と変わらない本質
この本を読んで感じるのは、
「本質は何も変わっていない」ということです。
教育が国をつくる
技術が富を生む
情報と現実を見て判断する
そして何より重要なのは、
「自国の遅れを直視する力」
これが明治の日本にはあった。
■ まとめ
150年前の日本人は、
世界を見て、自分たちの弱さを認め、
そこから行動を起こしました。
その結果が「明治の成長」です。
今の時代、私たちも同じです。
現実を見る
強みを活かす
行動に移す
この繰り返ししかありません。
非常に示唆に富む一冊でした。備忘します。
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要するに人々の生活を充実させるには、こうした便利なものを利用することが大事なのだ。製鉄業を起こして諸々の器具機械を作って人々に利用させる事は、誠にわが国の政治の急務である。ページ56
東洋人種は欲望が激しくなく、道徳政治に服し、君主は人権を旨として国民を巧みに導こうとするが、それでも長年の蓄積は外国人の目をくらませるほどのものとなった。西洋人種は欲望が極めて強く、その性質を矯めようという意識が低い。その君主も、私財保全の政治を行って所有する土地やそこに住む住民から高い税を取り立て、膨大なものを懐に入れている。その様子は悪なき貪欲さだと言っても過言ではない。欧州の住民の間に自由論が激発し、王権を遮って民権を全うしようという議論がわき起こる原因もそこにある。東洋・西洋の人種の性質や感情が異なっている様は、ほとんど正反対である。ページ63
しかし、その真意はどこにあるのかと見るならば、結局は人心を掌握し、規律に従わせる道具とするために、宗教を政略的に使っているのではあるまいか。ページを67
…英国、ベルギー、プロイセン、ロシアがずば抜けている。ロシアは国土が広大なことで世界に冠たる国である。その多くは荒れ果てていて寒い不毛の荒野であるが、鉱産物は極めて豊富である。ただ輸送の便が悪いので、採掘しても利益が上がらないだけである。ページ98
西洋の鉱山事業者はただ貴金属類を採掘しようというのではなく、人々に必要不可欠な鉱物を掘り出して社会に利益を与えている。鉱物学が大いに有用である理由はここにある。注意が肝要である。ページ99
というのは、そもそも各国が分立して強弱の力関係においてバランスをとっている、いわゆる「親睦」という状態は実は皮相なものであり、仮面だけである。そうだとすれば疑い恐れるべき対象は、ロシアだけとなぜ言えるのか。ページ112
…そもそも各国が企みを持ち、勢力を用いるという観点から見るならば、我々が最も親しむべき国が英仏であるのか、ロシアであるのか、ドイツやオーストリアであるのか。これは世界の本当の状況をしっかり見極め、逆に、しっかりと調整しなくてはならないことである。従来の妄想や幻影に基づいた議論を完全に払拭し、精神を明澄にして判断することを、識者には望みたいものである。ページ113
…その目的は産業技術と貿易を広め、人々が富栄えることにある。日本からヨーロッパに来るとすべてのものが華やかで精密であり、我が国の技術が古拙であることを恥ずかしく思わないわけにはいかないが、ヨーロッパ人は自らの文明の浮華を嫌い、東洋の品物から真の価値をかえって見いだすことが多いそうである。ページ157
…一般民衆を教育する場合は、科目はできるだけ平易なものとし、理解できないから科学は嫌だというような気持ちを生徒が抱かないようにすることが大切である。ページ208
大体、人は生まれれば必ず言葉を持とうとする本態がある。だからこそ、その人が属する国の言葉を教える。これが国語である。言葉を身に付けるに従って、それを書き記す方法を教える。これが文法である。文字は意味を伝えることができるが物の形を描くことはできない。口で言えないことを手まねで伝えるように、文章で伝えにくい事は絵ではっきり伝えることができる。そこで図画ならわせる。人生において数と言うものは極めて大切である。生涯これは必ず付きまとうものである。そこで算数を学ばせる。ページ209
ここにあげたいずれの例も、習俗に逆らうことなく政治を行うことについての言葉である。西洋の政治は民衆の自主性を重んじる。これは昔の齊の政治似たところがある。そこで、国力がつよい国の場合、貴族が力を持ち、、富んだものがその勢力を分かちもつけれども、政権は時として民権に屈することもあるのである。…ビスマルクは老練熟達の賢い宰相である。そして皇太子はまだ若く血気盛んな年頃であるのに、かえってビスマルクの行き過ぎを心配しているのである。文明国の政治家たちはこのように真摯で篤実である。これは日本では見られないことではないか。ページ224
日本人は草の生えた山野をそのままにして牧畜を営むこともなく、岩山も放置して鉱業を起こす気持ちもなく、森林も役に立たない土地だと考えて、そこから利益を上げようとしない。これが日本の国家経済が振るわない根本的理由である。ページ283
…そもそも昔栄えた民族がいちど衰えると、再度栄える事は難しいのである。今日のイタリアを昔の姿に比べれば、かつての威勢はなんと盛んであったことか。ローマ市内には2000年ほども昔の古跡が多い。これをめぐっていると感無量の思いに耐えない。ページ317
わが国には昔から独創性が乏しい。そして他者の知識を学び取ることには能力を発揮する。建築、製鉄、陶磁器製造、黄色技術等は皆中国、朝鮮から受け入れ、今ではわが国の方が優れた技術を発揮するようになっている。ページ360
西洋には博物館があり、些細なものでも収蔵している。図書館や文書館を設置して断簡ンや破棄されそうな文書さえ集めて保存している。文化の極致と言うべきであろう。ページ396
このようにハンガリーは元来モンゴリアン人種の1つであるフン族の国で、その面積はほぼ我が国に匹敵しているが、人口は半分足らず、ヨーロッパの東辺境部にあって、その風俗習慣は全てヨーロッパ風とは異なっている。ページ464
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