『Web3とは何か ― NFT、ブロックチェーン、メタバース ―』を読みました。
副題にある3つの概念は、正直なところ、これまで断片的な理解しかなく、ほぼ「知らなかった」と言ってよい内容でした。その意味で、本書は非常に勉強になりました。
メタバースについてはイメージ先行で語られることが多い一方、ブロックチェーンの問題点、そしてNFTの本質について、ここまで冷静に整理されている点が印象に残りました。


NFTとは何か ―「真贋を見極める仕組み」
NFT(ノンファンジブル・トークン)とは何か。
本書を通じて初めて、「NFTとは真贋を見極める仕組みである」という概念を、腑に落ちる形で理解できました。
日本語では「非代替性トークン」と訳されることが多いですが、要するに
「同じものが無数に複製できるデジタルデータの中で、これが“唯一である”と主張するための仕組み」
という点に尽きます。
ただし重要なのは、NFTが証明しているのは
• ブロックチェーン上で「そのリンクが唯一である」ことであって、
• 作品そのものが本物であることを保証するわけではないという点です。
NFTアートがもてはやされた背景には、この誤解が少なからずあったのではないかと感じます。


技術は新しいが、思想は古い
誤解したくないのは、この種の技術自体は昔から存在していたという点です。
刻印技術、署名、認証、台帳管理――それらの延長線上にNFTやブロックチェーンがあります。
NFTの新規性は、「刻印(証明)」にブロックチェーンを使ったという点にあります。
つまり、技術の組み合わせによる進化であって、ゼロから生まれた魔法ではありません。


HTMLとメタ情報 ― 私は「台本」に例える
本書ではHTMLの「タグ」や「メタ情報」にも触れられています。
メタ情報とは、一段階上の視点から書かれた情報のこと。
私はこれを「台本」に例えて説明するのが好きです。
私たちが見ているWebページは「演技」や「舞台」そのものですが、その裏側には
• どう表示するか
• エラー時に何を返すか
といった台本(メタ情報)が存在しています。
「404 Not Found」と表示されるのも、偶然ではなく、HTMLでそう決められているからです。


Web2.0からWeb3へ ― 本当に解放されるのか
Web2.0は、ビッグテックに支配されたネットワークでした。
Web3は、それを解き放ち、
• 一般利用者が情報をコントロールし
• 情報が生み出す収益を自ら手にする
と語られます。
しかし私は、本書の主張と同様に、この世界がバラ色になるとは思えません。
結局のところ、
• 資本の大きさ
• 個人のリテラシー
に強く依存し、大きな権力移動が起きるだけなのではないか。
その見方に大いに賛同します。


ブロックチェーンの強みと弱点
ブロックチェーンの最大の特徴は、
「参加者全員が信用ならなくても、信頼できる結果を導き出せる」
という点です。
紛争地における金融インフラなどでは、確かに絶大な効果を発揮するでしょう。
一方で、ここが弱点でもあります。
• 合意形成のコストが高い
• みんなが集まって検証しなければならない
• 民主的な結果を得るために「全員の参加」を期待する構造
これは、日常的なシステムとしては非常に使いにくい。
「みんながみんなを疑わなければならない環境」では力を発揮するが、
通常の社会ではオーバースペックなのだと思います。


メタバースはDXそのもの
メタバースもまた、「個人が輝く世界」と語られますが、
実際に器を用意し、持続的に運営するには大組織・大資本が不可欠です。
私はメタバースを、
現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合が良い快適な世界
だと捉えています。
現実と同じなら、わざわざ仮想世界を作る意味はありません。
だからこそ、メタバースはDXそのものなのだと思います。
DXとは、「今までやりたくてもできなかったことを、デジタルの力で実現すること」。
その定義に、メタバースは確かに重なります。


結論 ― 権力が移動するだけ
Web3と名のつくシステムは、今後も広がるかもしれません。
しかし、権限と資源は最終的に利用者の手を離れる。
それは、利用者自身の選択によってです。
本質的な状況は変わらず、
権力が集中する主体が移動するだけ
この冷静な結論に、強い説得力を感じました。


技術の可能性に過度な期待を寄せるのではなく、
「何ができて、何ができないのか」
を理解した上で向き合うこと。
本書は、そのための良い地図を与えてくれた一冊でした。
備忘します。

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HTMLではこの仕掛け部分をタグと呼ばれるメタ情報を記述することで実現している。メタ情報とは一段階上の視点からの情報である。私はこれを台本になぞらえて説明するのが好きだ。ページ21
私たちは普段クライアントとしてサーバーにウェブページを要求し、見せてもらっている。よくウェブページが見つからなかったときに、「404ノットファウンド」と表示が返ってくることがある。これもHTMLで決めていることだ。ページ34
ウェブ2.0はビックテックにより支配されるネットワークでした。web3はこれを解き放ち、一般利用者が情報を自由にコントロールし、情報が生み出す収益そのものを手にできるのです。ページ27
ブロックチェーンも、NF Tも、メタバースも、個人が輝けるとのメッセージとは裏腹に、大組織や大資本がないと、器を用意し、持続的に運営する事は難しい。ページ39
NF T同じものがいっぱいあるけどこれが本物とする仕組み。ノンファンジブルトークンの役で、日本語で表現するときは「非代替制トークン」とすることが多い。ページ49
誤解したくないのは、この種の技術は昔からあることだ。いろいろなバリエーションもある。NFTは刻印技術にブロックチェーンを使った点に新規性がある。ページ51
メタバースはネット上に構築される仮想世界だが、これを構築するのにこそ大組織、大資本が必要だ。ページ68
意見を出すコストと合意形成ができたときのプロフィットがともに大きいので嘘の意見書を送り出す動機を注いでいる。仮に嘘意見書を提出したとしても、それが検証しやすい状況を整えているのでみんなが検証して無視することで裏切り者に渡さない。ページ108
そしてここがブロックチェーンの弱点でもある。みんなに集まって検収してもらわないといけないのだ。民主的な結果を求めるために、みんなの全員に期待する?ページ144
これらを通じて、私はブロックチェーンを使いにくいシステムだと考えている。先に述べたような理由から、みんながみんなを疑わなければならないような環境では絶大な威力を発揮するポテンシャルがある。ページ169
これはデジタルデータで唯一性を証明したいに尽きる。デジタル技術はその登場と洗練によって、多くのビジネスを変えてしまった。ページ185
NF Tでも同様のことが起こっていると考える。NF Tアートであることが、その作品へのリンクがそのブロックチェーン内で唯一であることを証明はしても、それ以上の機能は無いし、まして作品が本物である事は証明しない。ページ236
ブロックチェーンが思想として持つ民主化は国家や企業からの解放である。だが個人が丸裸で解放されたその場所は取り扱い注意の荒野で、参加者に求められる知識やスキルのハードルが途方もなく高いので、皆参加しない。ページ264
ブロックチェーンは参加する全員が信用ならなくても、信頼できる結果を導き出せる点が傑出している。紛争地における金融の提供など、絶大な効果があるだろう。ページ265
NF Tはブロックチェーンをベースにした仕組みだ。だからその強みも弱みもブロックチェーンの限界に引きずられる。ブロックチェーンは非中央集権的な意思決定を実現する仕組みとして革新をもたらしたが、運用するための前提条件が難しい。不特定多数の協力が必要だが、協力のインセンティブとして成功しているのは、今のところ仮想通貨に限局される。人気が続かず人が減ると真性性や継続性が失われる。ページ292
私はメタバースを、現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合が良い快適な世界と考えている。現実と同じであれば、わざわざ苦労して仮想世界を作る必要はない。何らかの形で、快適な世界でなければならない。ページ309
だからメタバースと言うのはDXそのものだと思う。…DXとは今までやりたくてもできなかったことがデジタルツールを使って組織や仕事のやり方を変えることでできるようになることだ。ページ313
web3と名のつくシステムが広まるかもしれない。しかし、権限と資源は結局利用者の手を離れることになるだろう。それが利用者の選択だからだ。だから本質的な状況は変わらず、権力が集中する主体が移動するだけだと考える。ページ382

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