ふと立ち寄った古本屋で、手のひらサイズの『ポケットブック版』を見つけました。最初は要約かと思いましたが、これは著者による新しい書き下ろし。小さいながらも中身は濃く、何度も読み返したくなる一冊でした。

特に印象的だったのは、人間の「損失回避」の心理と、「希少性」の力。
「ほんの少し得になる提案」では人の行動は動かない。伝えるべきは「それを逃したら大きな損になる」こと。
これはランディングページや広告文にも応用できる鉄則です(p.110)。

また、「人脈を広げたいなら、まず雑談せよ」(p.51)というアドバイスも実感をもって受け止めました。
説得とは論理だけではなく、ストーリーと感情が伴って初めて動く。

📝記憶に残しておきたい知見
■ 説得の原点は「与えること」
人間関係の基本にあるのは「返報性」。何かをしてもらったら、何かを返したくなる。だからこそ、まずこちらから差し出すことが説得の第一歩になる(p.2)。

■ 助け合いは「先手」が鍵
「誰が私を助けてくれるか」ではなく、「誰に先に手を差し伸べられるか」を考える視点が重要(p.4)。支援はギブアンドテイクであり、信頼の積み重ねが共同体を強くする(p.8)。

■ 行為泥棒には援助ではなく“助言”を
与えることを一方的に期待する相手には、距離のとり方が必要。助けるのではなく、知恵を貸すというスタンスが健全(p.12)。

■ プレゼントの選び方にも科学がある
高価格帯の商品のお手頃品より、低価格帯の“高級品”の方が印象に残る(p.16)。また、欲しい物リストから選ぶのが実は正解(p.14)。

■ 説得は「感情の波」を読んで
相手の状態によって、同じ提案でも効果は大きく変わる。怒りや動揺がある時は無理をせず、間合いを取るのが賢明(p.28)。

■ 雑談がチャンスを連れてくる
イベント前後の“すき間時間”にこそ、スマホではなく人に目を向けるべき(p.54)。話しかける勇気が、未来を拓く鍵になる。

■ 人の心に届くのは“数字”より“物語”
冷たい事実だけでなく、あたたかいストーリーや感情のこもった表現が必要。説得力は感情移入から生まれる(p.59)。

■ 自分の“失敗”は魅力にもなる
優秀な人がミスを認めることで、かえって好感が増す(p.41)。誠実さが信頼を呼び込む。

■ 頼まなければ、何も得られない
「イエス」と言ってもらうには、まず声をかけること。しなかった後悔は、じわじわと尾を引く(p.48)。

■ 説得の準備は“想定力”
どこで譲れるか、何を最優先するか。交渉前に整理しておくことが、落とし所を見つけるカギになる(p.33)。

■ 相手の“理想像”を引き出す
「あなたは人助けができるタイプですか?」と聞くだけで、行動の一貫性を発動させ、協力率が劇的に上がる(p.76)。

■ 理由を添えれば説得力が上がる
たとえ“当たり前”でも、説明は省略しない方が良い。「なぜそうするのか?」は人を納得させる軸になる(p.83)。

🧠まとめ
小型ながら深い本書は、対人関係・交渉・プレゼン・営業といった多くの場面で使える“人の動かし方”の教科書です。
情報量に圧倒される本編(無印版)と比べても、ポケット版はエッセンスが凝縮されており、すぐに実践に落とし込めるのが魅力です。

「影響力」とは一種の技術であり、再現可能なスキル。これからも繰り返し読んで、血肉化していきたい一冊です。

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与えると言う行為は人間らしさの中心をなし、説得という行為とも密接な関連を持っていますが、その理由は至ってシンプルです。援助や協力を受けた人は概して、今後、相手がもし協力を必要とするときには、してもらったことのお返しに手を貸そうと思う気持ちが強くなるためです。そう考える元になっているのが、返報性の規範、つまり、人間は自分が最初に受け取った行為をその相手に同じ形で返そうとするものであるという社会的ルールです。ページ2
特に銘じておくべきは、私を助けてくれるのは誰だろうと自問する事はまずない、という点です。それよりもずっと、彼らは、私が先に助けてあげられる相手は誰だろうということなのです。ページ4
交換とは、人々の間で、全員が得をするようなやり方によって行われる、ギブアンドテイクのプロセスです。パートナーシップはより強固になり、共同体は結束を強め、内部の文化がより信頼のできる健全なものになります。ページ8
…行為泥棒、つまり他人の善意を絞り取るばかりに熱心で、交換を特徴づける互恵関係のことなど考えようもしない人に対しては、どうしたら良いでしょう。オススメはこうです。行為泥棒には援助ではなく、助言を求めましょう。ページ12
喜ばれるプレゼントを選ぶという課題への簡単な解決策は、友人や家族に欲しいものを書き出してもらい、そのリストから買うものを選ぶ、と言うことになるのでしょうか。実のところ、その答えはイエスです!ページ14
…プレゼントには高価な商品カテゴリーの手ごろな品ではなく、安価な商品カテゴリーの高級品を選んで購入しましょう。ページ16
他の人と協力関係を作る別の効果的な処方は、あなたとの共同作業に相手を積極的に誘うことです。ページ21
誰かに何かを求めるときには、間が悪くないかどうかを確かめましょう。もし相手が動揺していたり、怒っていたり、悩んでいるようなら、出直すことにしましょう。ページ28
…要請への同意ということに関して、人はより負担の大きいお願いにノーと言った直後だと、より小さな頼みに対してイエスと言う見込みがずっと高くなりがちだということです。ページ31
…自分の理想的ゴールはなんだろう。そして、どんなことなら譲歩できるだろう。前もって求めるものと落としどころを用意し、それらを頭に入れておきましょう。ページ33
自分のウェブサイトには必ず経歴へのリンクを貼っておきましょう。ページ36
どうやら優秀な人物が失敗を認めると、その人物への好感度がさらに向上する場合があるようです。ページ41
人は私たちの予想よりもずっとイエスと答えてくれやすいのです。では頼み事をしなかった場合はどうでしょう。ビジネスチャンスは失われます。潜在顧客とは接点のないままです。人脈を広げる機会は無駄になります。ベジ46
…頼み事をしなかったために感じる後悔は、全く違っています。つかの間の針の痛みではなく、ずっと長く後を引く鈍い疼きと似たものになりがちです。ページ48
…もし、人脈を広げそれによって、将来のチャンスも広げたいと思っているのでしたら、やるべき事ははっきりしています。雑談をしてください。ページ51
…より伝統的な人脈形成環境でもやはり、同じ戦略が使えます。話が始まる前やイベントが開始されるまでのちょっとした空き時間には、なんとなく暇つぶしをしたくなるがちです。ですが次にそうした機会があったときには、iPhoneや報告書、Kindleあるいはパソコンをしまって、隣の人と会話を始めてください。ページ54
ですから、何かを主張する際には、冷たく、硬いことだけを並べて話してはいけません。より暖かく柔らかい、人間に溢れる物語も振りましましょう。ページ59
本当に効果的な説得もできる人は、時間をかけて自分と相手との間にある真の類似性を探し、それを表に出してから要請を行っています。ページ65
相手の本当に好ましいところを探し、その人物との会話にそれを盛り込むやり方を見つけましょう。ページ71
…「あなたは人助けができるタイプですか」と尋ねてから協力を求めると、承諾率が29%から77%まで上昇しました。どうやら質問をすることで、意識的に自分の記憶をダブらせ、あなたがこれから行おうとしている要請と一貫した経験に意識を向けさせるだけでも、ときには相手を十分にその気にさせるようです。ページ76
あなたの要請、提案、考えにイエスと言うよう誰かを説得するときには、いつも必ず、しっかりとした論拠を添えるようにしてください。たとえ、その理由が言うまでもないことのように思える場合であってもです。ページ83
どちらかと言えば、幅のある数値目標を設定した方がコミットメントが長続きするので、その目標に取り組む時間が長くなり、その結果と制度も高くなりやすいのです。ページ90
3人以上の候補者がたった1つの採用枠を争うような場面でのアドバイスはこうなります。最後に回りましょう。ページ100
あなたが相手にやらせたい事は既に大勢がやっているという事実を強調しましょう、というのが、他の人を説得しようとする場面向けのアドバイスになります。ページ104
フォロワーの数をの増加を強調してソーシャルネットワーク上のファンを増やしましょう。もしフォロワーの数が200人から400人に増えたら、フォロワー数が倍になったと言う事実をツイートできます。また、SNSがInstagramなら、フォロワーに何か誘引を提供して目標とする数字に到達するのを手伝ってもらいましょう。ページ107
…人間の心における損失と利益の交換レートは、1対1よりもむしろ1対2に近いので、現状より多少メリットがある程度の提案に何かを変えさせる効果はまず見込めないと認識することです。つまり大切なのは、断然多くの長所を持ってると言うことをはっきり伝え、その上でそうした長所を放っておけば失われてしまうものとして提示することです。他の人を説得する際に、もう一つ忘れていけない大事な点は、あなたの助言やお勧めの、希少性と言う観点から見た価値です。説得しようとする相手に、あなたの提案の本当に珍しい、そして独特な点を示すと、説得力が非常に増すでしょう。ページ110
発表を行うときには、何を1番覚えてもらいたいかと自問しましょう。そして、その内容を出すのは発表の最後にしましょう。ページ117

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