日野原重明先生の著書『100歳は次のスタートライン』を読みました。この本は、先生が99歳前後に語られていた内容が凝縮されたような一冊で、私自身、先生の講演を実際に拝聴した記憶がよみがえりました。
あれは、先生が99歳のときだったでしょうか。1時間立ちっぱなしでの講演。あの体力と気迫には本当に驚かされました。最初は「少し話がぼんやりしているかな?」と思ったのですが、後半にかけてそれが伏線だったことに気づきました。講演全体が計算され尽くした構成で、最後にしっかりと伏線回収されていたのです。
印象に残っているお話
講演の中では、『葉っぱのフレディ』や『いのちの教室』、そして「新老人の会」についてもお話がありました。まさにこの本に書かれているテーマそのもので、あの頃からこれらを先生の“ライフワーク”として取り組まれていたのだなと改めて思います。
中でも特に印象に残っているのは、次のようなお話です。
• 「10年後の予定を立てることが大切」
 たとえ高齢になっても、「未来」を見て生きることが大事。予定を持つことで人生に希望が生まれるのだと。
• 「語学を始めたいなら、10年あれば一言語マスターできる」
 何歳であっても、挑戦しようという気持ちがあれば遅くはないという力強い提案でした。

本の中で心に残った言葉たち
読書中、たくさんの印象的なフレーズがありました。一部をご紹介します:
• 「怒ってはいけませんよ。怒りの矛先は結局自分に向かいます」(p.47)
• 「怒りを鎮めるには、息を吐ききることと歩くこと」(p.54)
• 「呼吸法を変えるだけで体も心もすっきりする」(p.59)
• 「年齢にとらわれずに何か新しいことを始めましょう」(p.67)
• 「来世の課題にしようと思うことで、現世で叶うこともある」(p.70)
• 「困難が来たら“チャンスが来た”と歓迎しましょう」(p.93)
• 「老化をさらりと受け止め、できないことは助けてもらえば良い」(p.102)
• 「首を動かすことで若々しさを保てる」(p.123)
• 「病とともに生きる“有病息災”を目指そう」(p.131)
• 「簡単な体操を続けて筋肉や関節を保つ」(p.138)
• 「若者に『ああいう年の取り方をしたい』と思わせる存在であるべき」(p.167)
• 「100歳を迎える今、感動はむしろ増えている」(p.177)
• 「死を見つめることは、生を直視すること」(p.182)
• 「新老人は社会の希望になり得る」(p.191)
最後に
この本を読んで、あの講演の感動がよみがえり、自分自身の生き方をもう一度見直すきっかけになりました。年齢を重ねることが、終わりではなく「次のスタートライン」であるという視点を持てるようになったことは、先生からいただいた大きな贈り物だと思います。備忘します。


怒ってはいけませんよ怒りの矛先と言うのは相手に向けたつもりでも、自分に向けているのと同じなのです。ページ47

怒りと言う心の病を壱発直す特効薬があります。それは息を吐き切ることと歩くこと。要するに、体の状態を良くしてあげることで気分を良くしてあげる。ページ54

鼻から吐いて鼻からす。鼻息が聞こえないように静かに。息は止めずに吐き切ったと同時に吸う。たったそれだけで、体も心もすっきりします。長く息をする事は長生きにも通じ、それこそがこの呼吸法を取り入れて暮らす私の実感です。ページ59

年齢にとらわれずに何か新しいことを始めてみましょう。きっと生きていてよかったと思える楽しい時間が手に入ります。ページ67

歳をとり、残された時間が少なくなってくると、来世のことが頭をよぎるようになるものです。やりたくてできなかったことを、来世の課題にしようかな、そんなふうに思うこともあるでしょう。それは悪いことではありません。自分のやりたいことがはっきりしますし、周囲の人たちにも話したくなりますから、うまくいけば現世で叶えることができるかもしれません。何を隠そう、私がそうでした。ページ70

こういう例はいくつもあります。だから困ったことが起きたら、「チャンスが来た、ウェルカムウェルカム!と喜んでください。その心の持ち方がディストレスをユーストレスに転換し、新しい良いことを生み出す原動力になります。ページ93

歳をとると、困ったことがたくさん出てきます。年齢の割には頭も体もしっかりしていて、日々忙しく活動している私だって、老化を感じることがしばしばです。…老化をさらりと受け止め、できない事は人の助けを借りる、そう考えて、平然としています。少し位物忘れをしたって、大したことでありません。逆にいえばたいした事じゃないから忘れるんです。名詞が出てこなければ誰か教えて、話が聞こえにくれば、大きな声で喋って、荷物が重ければ、持ってもらえるかな?、小さな文字が見えないなら読んでもらえる?と誰かに助けてもらえば良いのです。ページ102

歳をとった人の中には、後ろから誰かに名前を呼びかけられると、体が後ろ向きになる人が少なくありませんね?これは非常に年寄り臭く見えます。若い人は首だけ回して後ろを見ますから、私が首の運動するのも、若々しい所作を保つことが目的なんですね。運動といっても、単に首をぐるりと回したり、左右に倒したり前後に動かしたりする簡単なもの。これをお風呂に入るときにやるだけで、首の柔軟性を保つことができます。ページ123

病気はない越したことありませんが、気に病んでいると心が休まりません。いつもビクビク、おどおどしていたのでは、生きる喜びも半減してしまいます。病とともに上手に生きる「有病息災」を目指すことこそが、健やかに生きることにつながるのです。ページ131

それから、筋肉や骨、関節などはいつも使っていないと硬くなってしまうので、日野原流の軽い体操を行っています。主に次の3種類です。1つは首の運動、最後に倒す、最右に傾ける、ぐるぐる回す、といった動作をそれぞれ5回ずつ、肩が動かないようにしてゆっくりと行います。… 2つ目は、腕の運動、重い椅子の背やテーブルなどに手をついて、肘をゆっくりと曲げます。立って行う腕立て伏せのような運動ですね。1日10回程度行うと、腕の筋肉を維持できます。3つ目は、太ももの運動、椅子に深く座ってどこにも手をつけずにすっと素早く立ち上がります。20回ほど繰り返すと良いでしょう。お尻や大腿部の筋肉が鍛えられるので、転倒するリスクを経験できます。ページ138

未来を担う若者を失望させてはいけません。特に中高年以上の人たちは、若者に歳を取るって素晴らしいことだな、自分もあの人のように歳を重ねていきたいな、と思ってもらえる存在でなければならないのです。ページ167

私は長生きしたおかげで、感動が減るどころか、増える一方。百歳を迎える近頃では、空を見上げて、風が梢を鳴らす様を見ただけで感動し、紙を取り出して詩を書き始めてみたくなるほどです。ページ177

死を見つめる事は、生を直視し、今を精一杯生きることにつながります。死ぬのが怖いと目をそらさずに、命は永遠に循環すると言う視点を持って寄り添うことが大切です。ページ182

21世紀を迎えようとする2000年秋、新老人の会を立ち上げました。新老人とは、75歳を過ぎても元気で自立し、これまでの人生で培った知恵や経験を社会に還元できる健康老人。少子高齢化が進む日本にあって、新老人こそが社会の大きなパワーになり得る。若い人たちに未来への明るい希望を提供できる。ページ191

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