先日、古本屋で小さな文庫本を見つけました。タイトルは『ビジネスに役立つ論語』。手のひらに収まるサイズで、落ち着いた装丁にも惹かれて思わず購入しました。
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 内容は簡潔で、現代語訳が中心でしたが、ページをめくるたびに、かつて出会った懐かしい言葉の数々がよみがえってきました。中でも、特に心に残ったのが次の二つの言葉です。

■ 「君子はもとより窮す。小人は窮すればここに濫(みだ)る」
 この言葉には、個人的に強い思い出があります。
 以前読んだ井上靖の歴史小説『孔子』の中で、孔子が弟子にこの言葉を語る場面があり、深く感動したことを今でも覚えています。

 今回、あらためてこの言葉に出会い、「やはり論語は、人を支える“軸”になり得る」としみじみ感じました。ビジネスの現場でも、不測の事態や失敗は避けられません。そんなとき、感情的になって混乱を招くのではなく、どっしりと構えて冷静に対処できるかどうか。その姿勢が、その人の信頼や器を決めるのだと思います。

■ 「近き者よろこび、遠き者来る」
 この言葉にも、ハッとさせられました。私たちはつい、遠くの大きな成果や華やかな結果を追いがちです。でも論語は、「まずは身近な人を大切にすることが、やがて遠くの人をも惹きつける」と教えてくれます。
 家族、同僚、取引先……目の前にいる人を喜ばせられているか?
そんな問いを自分に投げかけるきっかけになりました。ビジネスも人間関係も、原点はやはりここにあるのだと感じます。

 他にも、「学びを楽しむ心が原動力になること」「挑戦の芽が実を結ぶとは限らないが、それでも一歩を踏み出すことの大切さ」など、日々の営みを支える言葉がたくさん詰まっていました。
 論語は、「すぐに役立つ」ノウハウではないかもしれません。
けれど、心の奥に置いておくことで、自分の行動や考えを整える“内なる地図”のような存在になると思います。
 忙しい日々の中、たった一行でも、自分の軸にできる言葉を持っておく。
それは、何よりの財産かもしれません。

備忘します。

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●自ら苦労を負える人が大きな財産を勝ち取る
「これに先んじ、これを労す」
挑戦には、苦労も責任もつきものですが、それを担うことが将来のあなたにとっての財産にもなるのです。ページ27
●身近な人を幸せにすることが、大きな成功に発展していく
「近き者よろこび遠き者来る」
いきなり大それた目標立てるのではなく、身近な人の幸せを大切に育てていけば、やがてその芽は大きく実を結ぶことでしょう。ページ33
●限界を決めつける心が成功への道を閉ざす
「力たらざるものは中道にして廃す。今女は画れり」
何もやらないうちから諦めることなく、一度は力を尽くすことで、それが将来の成功の第一歩となるのです。ページ37
●人生何が起きるかわからない。チャンスを逃さず挑戦を
「苗にして秀でざるものあり。秀でて実らざる者ある」
毎日を丁寧に過ごし、いざという時に挑戦する姿勢を持つことが、実り多い人生につながります。ページ51
●学びを楽しむ心が、最大の原動力
「これを知るものはこれを好むものにしかず。これを好むものはこれを楽しむものにしかず」
心から好きになり、全身で楽しめるようになることが、物事の本質を得得する秘訣です。ページ61
●逆境に腐らない心が物事を好転させる
「歳寒くして、然る松柏松柏の彫(しぼ)むに後れることを知る」
悪い時期にこそ、腐らず、たゆまぬ努力を払うこと。そうすれば、必ずまた良い流れが訪れます。そこを乗り越えられるか否かでその人の真価が問われるのです。ページ117
●トラブルに振り回されない心の強さを持つ
「君主もとより窮す。小人窮すればここに濫(みだ)る。」
どれだけ優秀な人間であっても、しくじることもあれば、困った事態に直面したり、トラブルに巻き込まれることもあります。差が生まれるのは、その後の対処の仕方です。…トラブルが起こったら、まず1つ深呼吸を。それから向き合えば、適切な対処ができます。いかなる状況にも振り回されず、どっしりと強い心を持って対処する力を養いましょう。ページ121
●過去への執着を手放す
「成事は説かず、遂事は諫めず、既往は咎めず」
過ぎたことを、いつまでもくよくよ後悔しても仕方ありません。それはもう終わったこと。同じ間違いを繰り返さないように気をつけて、新しい目標へ向かうことが大切なのです。ページ132
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